祖父の代からかよう
地元の床屋さんに店主が高齢になり後継者もいないため店じまいしますと貼り紙がしてありました。たしかお弟子さんがいたはずですがそのお弟子さんすらもシニアです。
遡れば祖父も父も私もかよっていて気に食わないおかっぱ頭にされた記憶があります(当時はショートボブなんておしゃれな髪型はありません)母が要介護になってからは家からいちばん近かったため介助しながらノロノロあるいていってさんざん抵抗されて中途半端な仕上がりにしかなりませんでした。認知症の母にすれば前に倒れるシャンプー台が恐怖でしかなかったようです。
こんなことすらできないなんて。付き添いという名目で自分の時間がどんどん削られていくのが虚しくて雪のちらつく夕方、母といっしょに歩きながら泣いて逃げ出したくなりました。なぜ私ひとりだけこんな目にあってるんだろう。たったひとりのきょうだいは虐待されただのなんだの恨みごとばかりでいっさい知らんふり、私ひとり孤軍奮闘の介護生活で10年があっというまにすぎていきました。
うっかり貼り紙をみつけて記憶の蓋があいてしまったようです。もうすべておわったことなのにふとした拍子によみがえるものなんですね。あの当時の私に「大丈夫、みんなあなたの味方だし時間はかかってもなるようになるから」といってあげます。