理不尽はまかり通るもののようです。私の担当顧客を勝手に自分の担当にして手数料を稼ぎ、くだんの上司は都心の大口顧客が多数口座を持ち、売買の出来高も国内有数の店舗へ栄転していきました。
引き継いだ後任者は、損切りばかりさせられた顧客の対応に苦慮したのだと思います。顧客にすれば相場は低迷し勧められた銘柄もぱっとせず、数千万円投資したのに利益がないどころか手持ちが減っている現実を、自らの勉強不足とだけ捉えるには納得がいかなかったようです。
しばらくしてから栄転した上司が私の在籍店舗へ出張してきていました。交通費清算書など見ると、どうやら損切りばかりさせられた顧客が裁判所に調停の申し立てをして、出廷するためきていたのです。
元上司は数年話もしていないのに「元気でやってるのか?」などと後ろめたさを隠すような照れ笑いで親しげに話しかけてきて「愚かだな」と思ったものでした。
調停がどのようになったかわかりませんが、おそらく上司は「会社の指示でやった」「あなただって同意したじゃないですか」とかなんとか自分は悪くない、同意の上でのことだったとでも弁解したのでしょう。
「会社の指示でやった」のだとすれば申し立てを法人相手に起こさなければなりません。その場合「会社」とやらはどこまで庇ってくれるのでしょうか。おそらく顧客はその上司個人を訴追したかったのでしょう。
承認欲求を満たしたかった、だから無知で金のあるあなたを利用した、というのが本音でしょう。そのために手段を選ばず私が担当だったのに、勝手に担当者コードを書き換えて手数料収入を自分のものにした。
黙っていればわからないからと、次第に売買頻度を高くしてリスクの高いエクイティ商品まで売りつけた。結果希望通り栄転できた。というのが真実です。
世の中というのは、そういった姑息な手段でも昇進可能だったりもしますが、誠実な対応でその人となりときちんと向き合えず、自分の出世道具としか顧客を捉えていなければそれ相応の結果になるのは推して知るべしです。
狭い世界のモノサシで何十年も生きていれば、他に道がなかった、こうするよりなかったという言い分にもなるでしょう。
けれど一顧客の人生を左右しかねない仕事を生業としているなら、もう少し俯瞰できる視野を持ちたいものです。人生勝ち取ったような気でいても、違う場面では今度は自分がその顧客と同じ状況になるかもしれません。(高額の高齢者施設にぼったくられるとか)
私たちは常に立場が入れ替わり、いつどちら側にいくかわからない場所で生かされています。