やはりルーツが大切
紀州に暮らしていたわりに有吉佐和子女史の作品は「華岡青洲の妻」しか読んだことがなくほかの作品もトライしてみることにしました。高校生ぐらいのころ世界初の乳癌手術を成功させた実話と思って読みすすめると嫁姑問題という隠れたテーマが浮かびあがってきました。麻酔薬の人体実験に自分の身を差し出すことで華岡青洲先生にどちらがより愛されているかためすというなんとも寒々しいストーリーでした(実際のところはわかりませんよ)
今回読んだ「紀ノ川」は紀州の素封家出身の有吉佐和子さん自身の物語でもあります。知っている地名がたくさんでてきてあのあたりだなとうっすら土地勘のある私にはとても懐かしいものでした。はじめて訪れた当時は家電製品の周波数を切り替えないと使えないとか関西弁とはちがうイントネーションにとまどったり20代のうちになんとか結婚しようとする人が多く保守的な土地柄なんだと理解しました。
なにより紀ノ川は海のように広く向こう岸がみえないほどの川幅に驚き南海地震がきたらひとたまりもないなと思いましたね。そのわりに住民の防災意識が低くそんなもんなのかなと。小説にはでてこないけれど梅やみかんの収穫期は有給とって会社を休んだり香典袋の水引きが黄色だったり(49日以降使う)ケチャップの消費量が日本一だったり住んでみないとわからないことばかり。
贅沢な挙式とお支度を整えた娘が戦後未亡人となりお子さんはアルバイトしながら大学にかようようになるなど時代に翻弄されるようすが描かれています。そういえば有吉先生はむかし笑っていいとも!のテレフォンショッキングに出演され電波ジャックした記憶があります。あれはそういう設定だったようですね。
